反射鏡系
球面鏡
球面の表面を反射面とするもので、凹面鏡と凸面鏡があります。
この場合の焦点距離は、曲率半径をrとすると
となり、凹面鏡の場合はrをマイナス、凸面鏡の場合はrをプラスとします。
したがって、
凹面鏡の f>0
凸面鏡の f<0
となります。
裏面球面鏡
上述の表面鏡は、反射率の経時変化や周囲環境での耐久性に問題が生じます。そこで単レンズの第1面を屈折面、第2面を反射面(裏面鏡)とした反射鏡があります。この反射鏡の特徴は、耐久性・汚れの影響が少ないことと屈折面を収差補正に使えることです。有名な例がマンギン鏡とよばれる裏面型凹面鏡です。
これは、マンギン(Mangin)が球面収差の少ない凹面鏡として1876年に発明したものとされています。
第2面を非球面にすると、球面収差・コマ収差が大幅に減少できます。
2面球面鏡
天体望遠鏡に用いられる反射光学系は2面の球面鏡からなります。
反射系の利点は、屈折系に比べ色収差が無く全長を短くすることができます。
しかし、中央部に遮蔽を生ずる欠点があります。
カセグレイン(Cassegrain)タイプ反射鏡は天体望遠鏡の反射対物系として用いられます。
天体望遠鏡では、収差を除去するために第1鏡を凹面放物面鏡、第2鏡を凸面双曲面鏡とします。これに平面鏡を付け加えて望遠鏡の耳軸(トラニオン)方向に光線を取り出す方式をナスミス式といいます。
「すばる望遠鏡」はカセグレン焦点とナスミス焦点をもつ望遠鏡です。
カセグレン鏡と似ていますが、小鏡に平行光束に近い光線が入射して、大鏡の曲率中心の近くに結像します。
シュヴァルツシルド(Schwarzschild)タイプの反射鏡は
主に顕微鏡対物レンズに用いられます。
顕微鏡の対物レンズとして使用される場合にはF'近くに物体があって、図の逆方向に光が進むことになります。
ウイリアム・ハーシェルは鏡面を傾けて使用しました。
このように光軸と傾いた光線を利用する光学系を軸はずし(off axis)光学系といいます。
[補足]
天体観測の精度をあげるには、口径の大きな望遠鏡が必要となります。
しかし、直径が何メートルにもなるようなレンズを作るための均質なガラス材料を得ることはほとんど不可能なため、大きな天体望遠鏡はすべて反射型となっています。
反射屈折系
単レンズと反射鏡とを組み合わせた複合型光学系を反射屈折系、反射屈折レンズ、カタディオプトリック系などといいます。
球面反射鏡だけでは収差は補正できないため、非球面化(放物面鏡等)により収差補正を行いますが、球面反射鏡と単レンズを組み合わせることにより補正が可能です。
1眼レフカメラ用のミラー型望遠レンズは、マンギンタイプの凹面鏡と凸面鏡を組み合わせ、さらにレンズにより収差補正した光学系です。
望遠鏡の分解能
望遠鏡にも光の回折のために分解能の限界があります。地上から見た2つの星が近づいていると、それぞれの回折もようが重なって1つの星のように見えてしまいます。2つの星に分かれて見える限界の角度を、望遠鏡の分解能といいます。
いま、対物レンズの半径をR、光の波長をλとすると分解能σは
となり、550nm(緑色)に対する直径5mの望遠鏡の分解能は約0.03秒となります。
実際に地上から星を見るときは、大気がゆらいでいるためにこのような分解能は得られず、1秒程度になってしまうということです。
2018 ©SANKYO KOGAKU KOGYO Co.,Ltd.